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副腎腫瘍:思春期、妊娠中、閉経期に発生したCTNNB1変異アルドステロン産生腺腫におけるGNA11およびGNAQの体細胞変異
Nature Genetics 53, 9 doi: 10.1038/s41588-021-00906-y
アルドステロン産生腺腫(APA)の多くにイオンチャネルやトランスポーターの機能獲得型体細胞変異が認められる。しかしながら、正常な副腎のアルドステロン産生細胞群においてもその頻度は高いことから、APAの発生には共ドライバー変異が必要であると考えられる。本研究では、41例のAPAについて全エキソーム塩基配列決定を行い、そのうち3例でCTNNB1およびGNA11の両遺伝子に機能獲得型変異が同定された。CTNNB1変異を有することが既知のAPAについて改めて塩基配列決定を行ったところ、27例中16例(59%)でGNA11またはGNAQにp.Gln209His、p.Gln209Pro、p.Gln209Leu体細胞変異のいずれかを認めた。二重変異APAに隣接する球状帯は過形成を起こし、GNA11の孤発性変異を有していた。本研究の英国人/アイルランド人患者コホートでは、APAが発生したのは10人のうち9人までが思春期、妊娠中、閉経期のいずれかであった。二重変異APAで10倍以上の発現亢進が認められた複数の遺伝子の中には、黄体形成ホルモンや妊娠ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の受容体をコードするLHCGRがあった。副腎皮質細胞へのトランスフェクションにより、アルドステロンの分泌や、二重変異APAで発現亢進が認められる遺伝子の発現に対して、GNA11およびCTNNB1の変異は相加的に影響を及ぼすことが示された。副腎皮質におけるGNA11/Q変異は、CTNNB1の共ドライバー変異がなければ臨床的な症候を引き起こすことはないと考えられる。