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肺がん:非喫煙者の肺がんのゲノム異常と進化様式に基づく分類
Nature Genetics 53, 9 doi: 10.1038/s41588-021-00920-0
非喫煙者の肺がん(LCINS)は、がんによる死亡の原因として頻度の高いものであるが、そのゲノム異常の全貌はほとんど明らかになっていない。本研究では、232人のLCINS患者の高深度全ゲノム塩基配列決定を行い、染色体コピー数異常の程度に基づいて定義される3つのサブタイプを明らかにした。最も優勢なサブタイプ(ピアノ)は、喫煙者の肺がんではまれにしか見られないもので、UBA1の体細胞変異、ARの生殖細胞系列バリアントによって特徴付けられる。また、変異負荷の低さ、腫瘍内不均一性の高さ、長いテロメア、頻度の高いKRAS変異、腫瘍の診断より何年も前からがんドライバー変異を有する前駆細胞が存在することから示唆される増殖の遅さ、といった幹細胞様の特徴も有している。ピアノ以外の2つのサブタイプは、特徴的な増幅およびEGFR変異によって特徴付けられるもの(メゾフォルテ)と、全ゲノム重複によって特徴付けられるもの(フォルテ)である。また、喫煙に関連した明らかな変異シグネチャーは認められず、それは受動喫煙に曝露されていた患者においても認められなかった。受容体型チロシンキナーゼ–Ras経路に関わる遺伝子群は生存率にそれぞれ異なる影響を与え、5種類のゲノム変化がそれぞれ独立に死亡率を2倍に上昇させた。本研究で得られた知見はLCINSの個別化治療への道を開くものである。