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COVID-19:双方向性のゲノムワイドCRISPRスクリーニングからムチンがSARS-CoV-2感染を調節する宿主因子であることが明らかになる
Nature Genetics 54, 8 doi: 10.1038/s41588-022-01131-x
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、感染者に軽度の呼吸器疾患から急性呼吸窮迫症候群(ARDS)まで、さまざまな症状を引き起こす。ウイルス感染に影響を及ぼす宿主因子を系統的に調べることは、SARS-CoV-2と宿主の相互作用や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の進行を解明する上で重要である。本論文では、SARS-CoV-2の侵入因子であるACE2およびTMPRSS2の内因性発現が見られるヒト肺上皮細胞において、CRISPRによるノックアウトおよび活性化のスクリーニングをゲノム全域で行った。その結果、クラスリン輸送、炎症性シグナル伝達、細胞周期調節、転写調節、エピジェネティックな調節など、高度に相互接続された宿主経路で働くウイルス促進因子および抗ウイルス因子を発見した。さらに、高分子量糖タンパク質のムチンファミリーが、in vitroおよびマウスモデルにおいてSARS-CoV-2感染を阻害する顕著なウイルス制限ネットワークであることが明らかになった。これらのムチンは、さまざまな呼吸器ウイルスの感染も阻害する。このSARS-CoV-2宿主因子の機能解析に基づく知見は、宿主を標的とした新しい治療法開発の生理学的に妥当な出発点となり、また、気道ムチンが宿主防御機構であることを明らかにした。