Letter

ホメオスタシス増殖は移植免疫寛容の障壁となる

Nature Medicine 10, 1 doi: 10.1038/nm965

非感作げっ歯類モデルにおいては、T細胞共刺激の遮断によって免疫反応を抑制することが容易であるにもかかわらず、記憶細胞を有する動物において免疫反応を抑制することは困難である。寛容誘導時にはアロ反応性T細胞の除去が重要であることを示す研究により、臨床試験においては移植時T細胞除去療法の利用が奨励されてきた。しかし、悪化を招きかねない、広範囲にわたる非特異的T細胞除去では、リンパ球減少状態で大量のT細胞増殖を引き起こすことがある。この過程は、ホメオスタシス増殖と呼ばれ、機能的な記憶T細胞の獲得を誘導する可能性がある。本論文では、臨床的に関連性のある末梢T細胞除去のマウスモデルを用いて、除去されずに残ったT細胞が相当量のホメオスタシス増殖を起こすことを明らかにする。この条件では、共刺激の遮断をしてもホメオスタシス増殖もアロ移植片の拒絶も有意には抑制されない。さらに、ホメオスタシス増殖を完了したT細胞は、in vivoにおける記憶細胞の既知の性質と一致して、野生型受容マウスに養子移入した際に寛容に対して顕著な抵抗性を示す。これらの結果は、臨床的に関連のある状況においてホメオスタシス増殖が重要であることを立証し、移植寛容の誘導に対してホメオスタシス増殖が障壁となり得ることを示し、また部分的または完全な末梢T細胞除去を用いる移植手順に対して重要な関わりをもつものである。

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