Article エストロゲン受容体中にある易損性のジンクフィンガーの化学修飾による乳癌の抑制 2004年1月1日 Nature Medicine 10, 1 doi: 10.1038/nm969 乳癌に対して現在行われている抗エストロゲン療法は、選択的に働くエストロゲン受容体調節因子群にエストロゲン活性と抗エストロゲン活性が混在するため効果に限界がある。今回、エストロゲン受容体のDNA結合ドメイン(DBD)にあるジンクフィンガーの機能が、ジスルフィドベンズアミドやベンズイソチアゾロン誘導体などの求電子試薬による化学反応で阻害を受けやすいことを明らかにする。これらの試薬はエストロゲン受容体と反応に関わる因子との結合を選択的に阻害することで、結合に続いて起こる転写を阻害する。このような化合物はエストロゲン刺激によって起こる細胞増殖を著しく阻害し、ヒトMCF-7乳癌を異種移植したヌードマウスではその腫瘍の大きさを著しく縮小させ、細胞周期とアポトーシスの調節を行う遺伝子の発現を妨げる。求電子試薬が易損性のC末端ジンクフィンガーを選択的に破壊し、それによりエストロゲン受容体が仲介する乳癌の進行が抑制されるという分子機構により、この阻害が引き起こされていることが、機能解析およびコンピューター解析から裏付けられる。今回の結果は、従来のエストロゲン結合拮抗作用ではなく、DNA結合レベルで乳癌を抑制するという新しい治療戦略の原理を立証するものである。 Full text PDF 目次へ戻る