Research Highlights 血小板生成にはケモカインが媒介する造血前駆細胞と骨髄の血管性ニッチの相互作用が必要である 2004年1月1日 Nature Medicine 10, 1 doi: 10.1038/nm973 造血前駆細胞の分化にかかわる分子経路は不明である。本論文では、ケモカインが媒介する巨核球前駆細胞と類洞の骨髄内皮細胞(BMEC)との相互作用が、トロンボポエチン(TPO)非依存性の血小板産生を促進することを報告する。インターロイキン6(IL-6)やIL-11などの巨核球に作用するサイトカインは、血小板が減少したTPO欠損(Thpo−/−)マウス、またはTPO受容体欠損(Mpl−/−)マウスにおいて血小板産生を誘導しなかった。これに対して、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)や繊維芽細胞増殖因子4(FGF-4)などの巨核球に作用するケモカインは、Thpo−/−マウスおよびMpl−/−マウスの血小板生成を回復させた。FGF-4およびSDF-1は、血管細胞接着分子1(VCAM-1)と晩期抗原4(VLA-4)が媒介するCXCR4+巨核球前駆細胞の血管性ニッチへの移行を亢進させ、生存、成熟、血小板放出を促進した。血管性ニッチを破壊したり巨核球の運動を抑えたりすると、生理的条件で、また骨髄抑制処理後に血小板生成が阻害された。SDF-1およびFGF-4は、骨髄抑制処理後に血小板減少を軽減した。これらの結果は、TPOが前駆細胞を増殖させるように作用する一方で、ケモカイン媒介性の前駆細胞と骨髄血管性ニッチの相互作用により、巨核球成熟と血小板を許容し指令する微小環境に前駆細胞が移動することを示唆している。前駆細胞に作用するケモカインは、臨床の場において造血を回復させる新たな治療戦略を提供するものである。 Full text PDF 目次へ戻る