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食塩感受性高血圧は血管平滑筋の1型Na+/Ca2+交換輸送体を介するCa2+流入が引き金となって発症する

Nature Medicine 10, 11 doi: 10.1038/nm1118

過剰の食塩摂取は高血圧に対する主要なリスクファクターである。本論文では、食塩感受性高血圧における1型Na+/Ca2+交換輸送体(NCX1)の役割を、NCX1を介するCa2+流入の特異的阻害剤であるSEA0400と遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。SEA0400は食塩感受性高血圧モデルラットの動脈圧を低下させるが、他のタイプの高血圧ラットや正常血圧ラットでは低下させない。SEA0400を食塩感受性高血圧ラットの大腿動脈から注入すると、動脈の血流量が増加し、末梢血管拡張の徴候を示す。SEA0400はウアバインが誘発する細胞内のCa2+濃度上昇と血管収縮を元に戻す。さらに、NCX1をヘテロに欠損するマウスは食塩感受性が低いのに対し、平滑筋にNCX1.3を特異的に発現するトランスジェニックマウスでは高い食塩感受性を示す。SEA0400はNCX1.3を発現する食塩感受性高血圧マウスの血圧を低下させるが、SEA0400非感受性を示すNCX1.3変異体では低下させない。以上の知見は、食塩感受性高血圧は血管平滑筋へのCa2+のNCX1を介する流入を引き金として発症することを示しており、NCX1の阻害剤が有効な治療薬となる可能性を示唆している。

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