Research Highlights

肝糖新生系遺伝子およびin vivoでの糖質代謝の制御におけるSTAT-3の役割

Nature Medicine 10, 2 doi: 10.1038/nm980

転写調節因子であるSTAT-3(signal transducer and activator of transcription-3)は、各種の生理的な過程に関与している。本論文では、Cre-loxP系を用いて作成された肝臓特異的にSTAT-3を欠失するマウスでは、肝臓での糖新生系遺伝子の発現増加に伴って、インスリン抵抗性を示すことを明らかにしている。これらのマウスに対し、アデノウイルスベクターを使った遺伝子導入により肝臓でのSTAT-3発現を回復させると、代謝異常および肝臓での糖新生系遺伝子の発現の変化は正常化した。培養肝細胞におけるSTAT-3の過剰発現は、糖新生系遺伝子を上流で制御するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1α(PGC-1α)とは無関係に糖新生系遺伝子の発現を阻害した。アデノウイルスベクターを使った導入により肝臓特異的に構成性活性型構造のSTAT-3を発現させると、糖尿病マウスでの血中グルコース、血漿インスリン濃度および糖新生系遺伝子の発現は著しく減少した。したがって、肝臓のSTAT-3シグナル伝達は正常なグルコース代謝恒常性の維持に必須であり、真性糖尿病における新しい治療標的となる可能性がある。

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