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MARCKS関連ペプチドは喘息のマウスモデルにおける粘液過剰分泌を阻害する

Nature Medicine 10, 2 doi: 10.1038/nm983

粘液過剰分泌は、喘息や慢性気管支炎、嚢胞性繊維症などの肺疾患の重要な特徴である。多くの研究が行われてきたにもかかわらず、このような症状に有効な治療法は見つかっていない。最近我々は、ヒト気管上皮培養細胞による粘液分泌にMARCKS(myristoylated,alanine-rich C-kinase substrate)タンパク質が必要であることを明らかにした。今回、MARCKSのN端ドメインに相当するペプチドを合成し、このペプチドを喘息のマウスモデルの気管内に投与したところ、粘液の過剰分泌が阻害されることが判明した。同一のアミノ酸組成をもつミスセンスペプチドでは、この効果は見られなかった。マウス気道の定量的な組織化学分析によれば、このペプチドの効果は杯状細胞からの粘液分泌を阻害することによっており、おそらく細胞内ムチン顆粒膜へのMARCKSの結合を阻害していると考えられる。このような結果は、哺乳類気道内での粘液分泌過程の調節にMARCKSタンパク質、特にそのN端領域が中心的役割を果たしていることを裏付けるものである。MARCKS関連ペプチドの気管内投与は治療に用いても喘息や慢性気管支炎、嚢胞性繊維症患者の気道における粘液分泌を軽減する可能性がある。

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