Letter PGC-1はPPAR-α依存的にTRB-3を誘導して肝臓のインスリン抵抗性を増大させる 2004年5月1日 Nature Medicine 10, 5 doi: 10.1038/nm1044 インスリン抵抗性は2型糖尿病発症の主な特徴であり、肝臓からのグルコースの放出の抑制、および筋肉へのグルコースの取込みの促進をインスリンが調節できなくなるのが特徴である。核ホルモン受容体コアクチベーターPGC-1(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)-γコアクチベーター1)は2型糖尿病の発症に関与するとされている。2型糖尿病のマウスモデルでは、肝臓でのPGC-1の発現が上昇しており、PGC-1は糖新生と脂肪酸酸化の構成的な活性化を、それぞれ核ホルモン受容体のHNF-4とPPAR-γとの結合を介して促進する。本論文では、アデノウイルスを用いてPGC-1の干渉性RNA(RNAi)を肝臓に導入して作出したPGC-1欠損マウスに空腹時低血糖がみられることを報告する。肝臓のインスリン感受性はPGC-1欠損マウスで高くなり、これは部分的には、哺乳類のtribbles相同体であるTRB-3の発現の低下を反映している。TRB-3はセリン-トレオニンキナーゼAkt/PKBの空腹時誘導性阻害因子である。肝臓ではTRB-3がPPAR-αの標的であることがわかった。肝臓でのTRB-3の発現をノックダウンすると耐糖能が改善されたが、TRB-3を肝臓で過剰発現させると、PGC-1欠損マウスでみられたインスリン感受性の表現型が逆転した。以上の結果は、核ホルモン受容体とインスリンシグナル伝達経路の結びつきを示すもので、またTRB-3の阻害剤が2型糖尿病の治療で有効となる可能性をも示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る