Letter

前駆細胞の移送は、HIF-1に誘導されるSDF-1を介して低酸素濃度勾配により制御される

Nature Medicine 10, 8 doi: 10.1038/nm1075

血液中を循環する幹細胞や前駆細胞の損傷組織への移送については、まだよくわかっていない。ケモカイン間質細胞由来因子1(SDF-1またはCXCL12)は、循環血中の細胞のCXCR4と結合して骨髄への幹細胞のホーミングを仲介する。胚の器官形成の際のSDF-1とCXCR4の発現パターンは相補的で、急速に血管伸長が行われている部位へと始原幹細胞を誘導する。しかし、末梢での組織修復におけるSDF-1の制御とその生理学的役割には未だ不明な点が残っている。本論文では、SDF-1遺伝子の発現は内皮細胞の低酸素誘導因子(HIF-1)によって制御されており、そのために虚血組織では酸素分圧の低下に正比例してin vivoでSDF-1が選択的に発現されることを明らかにする。HIF-1に誘導されるSDF-1の発現により、循環血中のCXCR4陽性前駆細胞の虚血組織への接着、移動およびホーミングが促進される。虚血組織でのSDF-1の作用や循環血中細胞のCXCR4の作用を遮断すると、前駆細胞の損傷部位への移動が阻害される。骨髄中に不連続に存在する低酸素領域でも、SDF-1の発現と前駆細胞の向性が増加している。今回の結果は、再生中の組織へのCXCR4陽性前駆細胞の移動が、HIF-1が誘導するSDF-1の発現を介して低酸素濃度勾配によって仲介されることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度