Article Ptpn11突然変異の細胞型および遺伝子量依存的な影響をヌーナン症候群モデルマウスで明らかにする 2004年8月1日 Nature Medicine 10, 8 doi: 10.1038/nm1084 ヌーナン症候群は、一般的なヒト常染色体優性の先天性障害であり、低身長や顔面異常、心臓欠陥という特徴を持ち、白血病のリスクも高いと考えられている。プロテインチロシンホスファターゼShp2をコードしているPtpn11遺伝子(Shp2としても知られる)の突然変異は、ヌーナン症候群の患者のほぼ50%で起こっているが、その分子的、細胞的、発生的影響およびヌーナン症候群と白血病の関連性については明らかでない。我々はヌーナン症候群に関連のある変異D61Gを発現する変異体マウスを作出した。D61G変異体は、ホモ接合体では胎性致死となり、ヘテロ接合体の場合には生存率が低下する。生存するPtpnD61G/+胎仔(ほぼ50%)では、ヌーナン症候群と同様な低体長と頭蓋顔面の異常、および骨髄増殖性疾患がみられた。変異の影響を大きく受けているPtpnD61G/+(ほぼ50%)では、Ras-GAPタンパク質であるニューロフィブロミン欠損マウスと同様な多発性心臓欠陥がみられた。これらのマウスの心内膜隆起ではErkの活性化増大が起こっていたが、Erkの過剰な活性化は細胞および経路特異的であった。今回の結果はヌーナン症候群と白血病の関連を解明し、Ptpn11という単一の機能獲得型突然変異が、複数の発生系統で遺伝子量依存的および経路選択的に作用してヌーナン症候群の主要な特徴すべてを引き起こしていることを明らかにするものである。 Full text PDF 目次へ戻る