Technical Report
軸索可視化:脊髄損傷への軸索の応答を観察するために皮質脊髄路を遺伝子導入によって標識する手法
Nature Medicine 11, 12 doi: 10.1038/nm1331
齧歯類の皮質脊髄路(CST)は、損傷後の中枢神経系軸索の再生・再構築を調べるために広く使われている。CSTの軸索は現在、標識用色素を注入して可視化されているが、こうした色素は侵襲性であり、染色が不完全で、変化もしやすく、機能的にきわめて重要だが数の少ない脊髄路成分を表示しきれないことが多い。今回我々は、黄色蛍光タンパク質(YFP)でCST繊維を特異的かつ完全に標識したトランスジェニックマウスの特徴を調べた。そしてこのCST-YFPマウスを使い、少数のCST成分が運動ニューロンとの単シナプス性連絡の大部分を担っていることを明らかにする。主要な背側CSTの損傷は新しい側枝の伸長を招き、それらの一部は、背外側・腹側CST成分の中にある、少数の大きくてミエリン鞘の厚い軸索から生じる。これらの新しい側枝の一部は、運動ニューロンに直接連絡するシナプスをさらに形成する。こうした再構築を最大限にして再生を促すよう考案された戦略を評価するために、CST-YFPマウスは役立つと考えられる。