Article セラミドの増加はマウスで肺細胞のアポト ーシスと肺気腫様の疾患をを引き起こす 2005年5月1日 Nature Medicine 11, 5 doi: 10.1038/nm1238 肺気腫は主に喫煙によって引き起こされる広く見ら れる疾患で、病因には肺胞細胞のアポトーシスがか かわっている。本論文では、第二メッセンジャーで ある脂質のセラミドが肺気腫における肺胞破壊の重 要なメディエーターであることを報告する。マウス とラットで、セラミドのde novo合成を制御する酵 素を阻害すると、肺胞細胞のアポトーシス、酸化的 ストレスおよび血管内皮増殖因子(VEGF)受容体の 阻害により引き起こされる肺気腫が防止された。ナ イーブマウスの気管内にセラミドを点滴注入すると 肺気腫が再現された。セラミドの中和抗体を用いた マウスでの実験および酸性スフィンゴミエリナーゼ 欠損繊維芽細胞を用いた実験から示唆されるように、 過剰量のセラミドは分泌型酸性スフィンゴミエリナ ーゼの活性化を介して起こるフィードフォワード機 構の引き金となる。またこれと同時に、細胞増殖的 に働く代謝産物であるスフィンゴシン-1-リン酸によ って開始されるシグナル伝達を増大してやると、肺 のアポトーシスが阻害された。この結果は、セラミ ドとスフィンゴシン-1-リン酸の間のバランスが肺胞 中隔の無傷状態維持に必要であることを示している。さらに、喫煙により誘発された肺気腫患者で見られ る肺セラミドの増加は、セラミド合成の増大がこの 疾患の重要な病因の1つである可能性を示唆してお り、これは現時点で有効な治療法のない肺気腫に対 する有望な治療標的となるかもしれない。 Full text PDF 目次へ戻る