本論文では、誘発性の「脂肪の少ない」モデル系であるFAT-ATTAC(fat apoptosis through targeted activation of caspase 8)マウスを初めて作出したこと、およびその性質について報告する。このトランスジェニックマウスの成長は野生型の同腹子と変わらない。脂肪細胞のアポトーシスは、FK1012アナログを投与して膜結合型の脂肪細胞特異的なカスパーゼ8-FKBP融合タンパク質の二量体化を促すことで、成長のどの段階においても誘発可能である。二量体形成剤の投与から2週間以内に、FAT-ATTACマウスの血中アディポカイン量は、遺伝子をノックアウトした場合とほぼ同じレベルとなり、脂肪組織量は著しく減少する。FAT-ATTACマウスは耐糖能異常を示し、無刺激時およびエンドトキシン誘導時の全身性炎症反応がともに弱く、グルコース刺激によるインスリン分泌に対する反応性が低く、またレプチンの作用に依存しない摂食増加がみられる。最も重要なのは、投与を停止すると機能をもった脂肪細胞の再生が可能な点である。このため、in vivoでの脂肪生成の研究、またさまざまな生理機能の調節や病的状態における脂肪細胞の重要性の詳細な検討が可能となる。