Article ウイルス:ポックスウイルスの病原性はAblファミリーに属するチロシンキナーゼの阻害により失われる 2005年7月1日 Nature Medicine 11, 7 doi: 10.1038/nm1265 ポックスウイルス科のワクシニアウイルスおよび痘瘡ウイルスは、哺乳類の細胞に侵入すると核の外側で複製してビリオンを産生する。このビリオンは微小管に沿って細胞表面に向かって移動して細胞膜と融合し、アクチンで満たされた膜状の突起によって感染細胞から近接の細胞へと移動する。本論文では、細胞結合性でエンベロープをもつビリオン(CEV)はアクチンの運動にAblおよびSrcファミリーのチロシンキナーゼを用いており、これらのキナーゼは重複した活性をもつことから、おそらく広範囲にわたる細胞種でアクチンの運動を可能にしていることを明らかにする。また、細胞からのCEVの放出は、Ablファミリー・チロシンキナーゼを必要とするが、Srcファミリー・チロシンキナーゼは必要でなく、ヒト慢性骨髄性白血病治療薬として使用されているAblファミリー・チロシンキナーゼの阻害剤STI-571(グリベック)によって阻害される。STI-571がウイルスの伝播を5桁低下させ、感染したマウスの生存を促進することが明らかになったが、この結果はこの薬剤が天然痘またはワクチン接種に伴う併発症の治療に使える可能性を示している。グリベックを使う治療は、宿主のチロシンキナーゼに依存する微生物感染に対する治療に広く効果があると考えらる。また、この薬剤はウイルスの分子ではなく宿主を標的としているため、この方法では従来からの抗菌薬による治療に比べると耐性が生じにくいだろうと予想される。 Full text PDF 目次へ戻る