Letter

早老症:ラミノパシーによる早期老化でみられるゲノムの不安定性

Nature Medicine 11, 7 doi: 10.1038/nm1266

早老症候群は、ゲノムの完全性の維持にかかわる核タンパク質に生じた変異の結果であることが多い。ラミンAは、核ラミナおよび核骨格構造の主成分である。ラミンAの短縮化は、重症型の早発性早老症であるハッチンソン・ギルフォード早老症候群(HGPS)を引き起こす。マウスおよびヒトでは、プレラミンAの成熟にかかわるメタロプロテイナーゼであるZmpste24の機能を欠いても、早老症の表現型があらわれる。今回、Zmpste24欠損マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)ではDNA損傷および染色体異常が増大し、またDNA損傷物質に対する感受性が高くなることを見出した。Zmpste24-/-マウスから単離した骨髄細胞は異数性が増大し、マウスはDNA損傷物質に対して高い感受性を示す。Zmpste24-/-のMEFおよびHGPS繊維芽細胞では、DNA損傷部位へのp53結合タンパク質1(53BP1)およびRad51の動員が起こらなくなっており、このためチェックポイント応答の遅延とDNAの修復異常が生じる。プロセシングされないプレラミンAを異所的に発現させた野生型MEFでは、チェックポイント応答およびDNA修復に同様の異常が認められる。これらの結果は、プロセシングを受けなかったプレラミンAおよび短縮型のラミンAが優性ネガティブ的な働きをしてDNAの損傷応答および損傷の修復を混乱させ、その結果生じるゲノム不安定性がラミノパシーによる早老症の一因となっている可能性を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度