Press Release C型肝炎ウイルス研究のための新しい培養系 2005年7月1日 Nature Medicine 11, 7 doi: 10.1038/nm1268 C型肝炎ウイルス(HCV)との戦いが遅々として進まないのは、ウイルスを研究するためのin vivo系がないためである。今回、HCVの完全な複製が起こり、培養細胞にもサルにも感染可能なウイルスを生じさせる系が初めて開発された。この研究は、HCVの新しい薬剤療法開発を助けるものになりそうだ。HCVの慢性感染患者は世界でほぼ1億7千万人にのぼると推定され、さらに毎年300万から400万人がHCVに新たに感染する。感染者の約75%では感染は長期にわたり、慢性の肝臓疾患となる。最近の研究で、培養細胞でウイルスRNAを複製できるようになったものの、感染性のあるウイルス粒子の形成には至っていなかった。今回、脇田隆字たちは、激症肝炎患者からクローン化したHCVゲノムが、ヒト肝臓癌細胞株(Huh7)で効率よく複製し、ウイルス粒子が生産されることを明らかにした。生じたウイルスはHuh7細胞に感染するが、HCVの受容体と推定されるCD81に対する抗体や慢性感染患者由来の抗体によって感染力が中和される。また著者たちは、この細胞培養で生じたHCVがチンパンジーに感染することも確かめた。この培養系は、ウイルスの生活環の研究や新規抗ウイルス戦略の開発にどうしても必要とされていた研究手段を提供するものだ。 Full text PDF 目次へ戻る