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白血病:BCR-ABLを発現している白血病性幹細胞のホーミングと生着にはCD44が必要である

Nature Medicine 12, 10 doi: 10.1038/nm1489

自己の造血幹細胞(HSC)移植による治療を受けた慢性骨髄性白血病(CML)患者では、移植細胞中の悪性の前駆細胞が白血病の再発にかかわるが、白血病性CML幹細胞のホーミングや生着の機構はわかっていない。本論文では、BCR-ABLを発現しているマウスの幹細胞・前駆細胞ではCD44の発現が増加しており、CD44が機能性E-セレクチンリガンドの働きを助けることを示す。レトロウイルスを用いた移植によるCMLマウスモデルでは、CD44に変異のあるドナーのBCR-ABL1を導入した前駆細胞は、レシピエント骨髄へのホーミングに異常が認められ、その結果生着が低下し、CML様の骨髄増殖性疾患の誘導が損なわれる。これと対照的に、レトロウイルスベクターのみを導入したCD44欠損幹細胞は、野生型HSCと同様に効率よく生着する。CD44は、BCR-ABLによる急性Bリンパ芽球性白血病の誘導には必要でなく、このことはCMLを発症させる白血病細胞が特異的にCD44を必要とすることを示している。BCR-ABL1を導入したCD44欠損幹細胞を大腿骨内へ直接注入するか、あるいはヒトCD44を共発現させると、ドナー側のCD44は不必要になる。CD44に対する抗体は、レシピエントでのCML様白血病の誘導を低下させる。これらの結果は、BCR-ABLを発現している白血病性幹細胞は、ホーミングと生着に関してCD44に対する依存度が正常なHSCよりも高いことを示しており、また、CD44の阻害はCMLでの自家移植に有益となる可能性がある。

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