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ワクチン:ワクシニアウイルスの2つの感染型の複数抗原に対する抗体反応の定量化から得られる天然痘ワクチン接種の評価基準
Nature Medicine 12, 11 doi: 10.1038/nm1457
天然痘は、ワクチン接種が防御能を誘導する仕組みが十分に解明されないうちに根絶された。天然痘を使った生物テロの可能性に対応して、英国政府はおよそ300名の医療従事者にワクシニアウイルス(VACV)Lister株をワクチン接種した。抗体反応の解析は、VACVの2つの感染型である細胞外エンベロープウイルス(EEV)および細胞内成熟ウイルス(IMV)の複数の表面抗原に対してELISA法を用いて、またプラーク減少中和法、蛍光フローサイトメトリー中和法を用いて行われた。抗体除去実験から、ワクチン接種を受けたヒトではIMV中和抗体の場合にはA27やH3といった複数のIMV表面タンパク質が標的となるが、EEV中和抗体の場合は表面タンパク質B5が唯一の標的であることが明らかになった。これらのデータから、今後調製する天然痘ワクチンからB5タンパク質を除外することは賢明でないと思われる。ワクチン接種を繰り返すことで、B5特異性が大幅に上昇し、その結果EEV中和抗体反応が著しく高まった。これらのデータから、新しくより安全な天然痘ワクチンおよび残存免疫を比較すべき評価基準が得られる。