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COX2阻害薬:選択的COX2阻害の遺伝的モデルから明らかになったヘテロ二量体が関与する新規なシグナル伝達

Nature Medicine 12, 6 doi: 10.1038/nm1412

シクロオキシゲナーゼ2(COX2)の選択的阻害薬は心血管合併症のリスクを増大させることがプラセボ対照試験により実証され、この系列の薬剤の一部は市場から回収されたために、広くメディアの注目を集めている。この種の薬剤は、プロスタグランジンHシンターゼ2(PGHS2)のシクロオキシゲナーゼ活性を阻害するが、そのペルオキシダーゼ機能には影響しない。選択的COX2阻害薬は、従来の非ステロイド系抗炎症薬(tNSAID)の抗炎症作用および鎮痛作用は維持し、PGHS1によって生成されるプロスタグランジンのもつ胃粘膜に対する細胞保護作用を残すという原理にもとづいて開発された。血管系およびマクロファージにはPGHS1とPGHS2の両方が存在し、リウマチ滑膜などの炎症性組織やアテローム性動脈硬化斑では両方の発現が促進される。PGHS1とPGHS2はそれぞれホモ二量体として機能すると考えられてきた。今回我々は、標的遺伝子点突然変異導入法によりY385F置換を起こして、選択的COX2阻害の新たなマウスモデルを遺伝学的に作出した。構造モデリングと生化学的分析から、PGHS1とPGHS2がヘテロ二量体を形成して、プロスタグランジンを生成できることがわかった。PGHS2 Y385F発現マウスでは出生時に動脈管が正常に閉鎖しているのに対し、PGHS2ヌルマウスでは閉鎖が見られない理由を、PGHS1-PGHS2のヘテロ二量体形成によって説明できる可能性がある。

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