Article 子癇前症:可溶性エンドグリンは子癇前症の病因にかかわっている 2006年6月1日 Nature Medicine 12, 6 doi: 10.1038/nm1429 子癇前症は妊娠に特有の高血圧症候群で、かなりの数の母体や胎児に病的状態や死亡を引き起こす。胎盤由来の可溶性VEGF受容体1(sVEGFR1あるいはsFlt1)の過剰による母体の内皮機能不全は、子癇前症病因の重要な要素であることが明らかになりつつある。本論文では、新規の胎盤由来可溶性TGF-βコレセプターで、子癇前症患者の血清中で濃度が上昇しているエンドグリン(sEng)は、疾患の重症度と相関しており、また出産後に濃度が減少することを報告する。sEngはin vitroでは毛細血管形成を阻害し、in vivoでは血管透過性と高血圧を引き起こす。妊娠ラットでのsEngの影響はsFlt1の併用投与によって増強され、HELLP症候群(溶血、肝酵素の上昇、血小板数の低下をきたす)や胎児の成長制限を含む重症の子癇前症を引き起こした。sEngはTGF-β1の受容体への結合や、eNOSの活性化および血管拡張への影響を含むTGF-β1下流のシグナル伝達を阻害するので、血管系におけるTGF-βシグナル伝達の調節異常をsEngが引き起こすと考えられる。今回の結果は、sEngがsFlt1と共同的に働いて重症の子癇前症を誘発する可能性を示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る