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免疫:T細胞前駆細胞の養子移入は同種異系の造血幹細胞移植後のT細胞再構築を増強する

Nature Medicine 12, 9 doi: 10.1038/nm1463

同種異系の造血幹細胞移植(HSCT)後の免疫不全は、T細胞系統に特に影響が大きく、感染、移植片機能喪失および悪性再発のリスク増加と関連がある。今回、養子免疫療法に用いる大量のT細胞前駆細胞の産生を目的として、in vitroで、Notch-1のリガンドであるDelta-like-1を発現するマウス間質細胞株OP9(OP9-DL1)上でマウスの造血幹細胞(HSC)を培養した。このような細胞を、T細胞を除去したマウス骨髄あるいは精製したHSCとともに、致死量の放射線を照射した同種異系のレシピエントに注入し、移植後のT細胞再構築への影響を検討した。OP9-DL1由来T細胞前駆細胞を注入されたレシピエントでは、(骨髄あるいはHSCのみを注入されたレシピエントに比して)胸腺細胞数の増加とドナーT細胞のキメリズムの大幅な改善が認められた。OP9-DL1由来T細胞前駆細胞は、宿主での寛容が成立するCD4+およびCD8+細胞集団を生じ、そのT細胞抗原受容体レパートリー、サイトカイン分泌および抗原に対する増殖応答は正常であった。OP9-DL1由来T細胞前駆細胞の注入は、リステリア菌(Listeria monocytogenes)感染への抵抗性を高め、移植片対腫瘍(GVT)反応を相当度仲介したが、移植片対宿主病(GVHD)は仲介しなかった。我々は、OP9-DL1由来T細胞前駆細胞の養子移入が、移植後のT細胞再構築を大きく促進し、その結果GVHDを起こさずにGVT反応活性を生じると結論する。

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