Letter 脊髄損傷:歩行の上位脊髄性制御の、脊髄損傷後に生じる間接的な脊髄固有の中継接続を介する回復 2008年1月8日 Nature Medicine 14, 1 doi: 10.1038/nm1682 ヒトおよび実験動物での脊髄損傷(SCI)では、損傷後最初の1カ月間にさまざまな程度の自発的機能回復がみられることが多い。このような回復は、脳から下行して不完全な損傷部位を迂回する、損傷を免れた軸索によりもたらされると広く考えられているが、その機構ははっきりしていない。今回、自発的回復の神経基盤を検討するために、運動学的、生理学的および解剖学的解析によって、脊髄外側の片側切除を空間的、時間的に分離した種々の組み合わせで行ったマウスを、内在性脊髄ニューロンの興奮毒性切断をした場合としない場合とで調べた。マウスでは、基本的にはすべての長い下行性経路が不可逆的に切断された場合でも、1つあるいは複数の損傷部位を迂回する脊髄固有の中継接続が、自発的な機能回復と上位脊髄性の歩行制御を仲介できることがわかった。これらの結果は、脳から損傷部位を通過する直接的投射の維持や再生がなくても、重症のSCI後に顕著な機能的回復が起こりうること、そしてこれは下行性の脊髄固有の接続の再編成によりもたらされることを示している。中継接続の再建を強化することを標的とした介入は、SCI後および脳卒中や多発性硬化症などの病態で、損傷部位を迂回し機能を回復するための新たな治療戦略となる可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る