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神経疾患:てんかんに白血球-内皮接着機構が果たす役割

Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1878

てんかんは世界の人口の約1%が罹患する慢性神経疾患だが、その病因にかかわる機構は十分解明されていない。我々はマウスのてんかんモデルを用いて、てんかん発作が脳血管の細胞接着因子の発現を上昇させ、白血球のローリングとその後の停止を増強することを示す。これには、白血球のムチンであるPSGL-1(P-selectin glycoprotein ligand-1、Selplgにコードされる)と白血球のインテグリンα4β1とαLβ2がかかわっている。マウスで、遺伝子操作によるPSGL-1の機能妨害あるいは阻害抗体によって白血球と血管の相互作用を阻害すると、てんかん発作が顕著に減少した。急性てんかん発作後に阻害抗体を投与すると再発性発作への進行が防止された。また好中球の枯渇も、急性てんかん発作の誘発と慢性の自発性再発性てんかん発作を防止した。ニューロンの興奮性を増強することが知られている脳血管関門(BBB)漏出は、急性てんかん発作活動により誘導されるが、これは白血球と血管の接着阻害により防がれ、白血球-血管相互作用、BBB損傷と痙攣発生の間の病因としてのつながりが示唆される。てんかん患者の脳では、対照者に比べて白血球数が多いことは、ヒトのてんかん発生に白血球が関与する可能性と矛盾しない。我々の結果は、白血球-内皮相互作用がてんかんの予防および治療の標的候補である可能性を示唆している。

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