Article 疼痛:NMDA受容体複合体からSrcを離すことによる炎症性、神経因性疼痛の治療 2008年12月3日 Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1883 慢性的な痛覚過敏は、N‐メチル‐D‐アスパラギン酸受容体(NMDAR)に依存して生じる。しかし、NMDAR遮断薬の臨床使用は、この受容体の生理学的機能の抑制によって生じる副作用のために制限されている。本論文では、NMDARを遮断せず、NMDAR機能の重要な促進因子となるプロテインチロシンキナーゼSrcの結合阻害により痛覚過敏を抑制する方法について報告する。HIV Tatタンパク質のタンパク質導入ドメインと融合させたSrcの40-49番アミノ酸を含むペプチド(Src40-49Tat)は、ホルマリンの足底投与によって惹起される疼痛挙動を防止し、フロイント完全アジュバントの足底投与または末梢神経損傷によって生じる痛覚過敏を軽減させることがわかった。Src40-49Tatは、本来の感覚閾値、急性侵害受容反応、あるいは心血管、呼吸、運動や認知の機能には影響を及ぼさなかった。したがって、NMDAR活性のSrcを介した増強を標的とすれば、NMDARの直接的な遮断による有害な結果を生じることなく、炎症性および神経因性の疼痛を抑制できる。この方法は慢性疼痛の管理に広くかかわってくる可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る