Letter

ウイルス:表裏反転したホスファチジルセリンを標的とするウイルス疾患治療戦略

Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1885

多様な種類のウイルスに有効な抗ウイルス薬の開発は緊急に必要とされている。感染宿主細胞あるいはウイルスのエンベロープに広く発現するリン脂質を標的とすれば、広範な特異性の獲得が可能となると思われる。我々は、細胞の活性化あるいは前アポトーシス性の変化などのウイルス複製中に起こる事象が、通常は細胞内に存在する陰イオン性リン脂質をウイルス感染細胞の外表面へ露出させるのではないかと考えた。そして、露出した陰イオン性リン脂質を認識して標的とするのに、キメラ抗体のバビツキシマブ(bavituximab)を使用した。ピチンデウイルス(バイオテロの候補物質であるラッサ熱ウイルスのモデルである)は、細胞への感染によって陰イオン性リン脂質の露出を引き起こした。バビツキシマブ投与は、ピチンデウイルスに致死的感染したモルモットのはっきりした病態を回復させた。血中からの感染ウイルスの直接的排除とウイルス感染細胞に対する抗体依存性の細胞傷害性が、主な抗ウイルス機構であると思われる。バビツキシマブとリバビリンの併用では、各薬剤の単独投与に比べてより高い効果がみられた。バビツキシマブは他の複数種のウイルスが感染した細胞にも結合し、マウスサイトメガロウイルスに致死的感染したマウスも救済した。露出した陰イオン性リン脂質を標的とするバビツキシマブによる治療は安全で有効と思われる。我々の研究は、感染宿主細胞やビリオン上の陰イオン性リン脂質が抗ウイルス薬開発の新たな標的となる可能性を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度