Article 腫瘍:急性前骨髄球性白血病幹細胞のPML-RARA分解を介した根絶 2008年12月3日 Nature Medicine 14, 12 doi: 10.1038/nm.1891 レチノイン酸や三酸化ヒ素は融合型がんタンパク質であるPML-RARAのタンパク質安定性や転写抑制活性を標的とし、その結果として急性前骨随球性白血病(APL)の退縮をもたらす。表現型としては、レチノイン酸はAPL細胞の分化を誘導する。本論文では、レチノイン酸がex vivoで白血病幹細胞(LIC;leukemia-initiating cell)の増殖停止を引き起こし、in vivoではPML-RARAマウスのAPLでLICの消失を引き起こすことを示す。PLZF-RARA融合タンパク質を発現するマウスのAPL細胞にレチノイン酸を投与すると完全な分化が起こるようになるが、LICの消失や病気の寛解には至らず、分化誘導とLICの消失は分離可能であることが明らかとなった。レチノイン酸と亜ヒ酸は協働的に働いてPML-RARAの分解を進めることで、相助的にLIC排除を起こすが、この組み合わせは分化を促進しない。PML-RARAのサイクリックAMP(cAMP)依存性のリン酸化部位は、レチノイン酸が誘導するPML-RARA分解とLIC排除に必須である。さらにcAMPシグナル伝達の活性化はレチノイン酸によるLIC消失を増強することから、cAMPがもう1つのAPL治療薬となる可能性が明らかとなった。したがって、PML-RARAの転写活性化は分化誘導を制御していると思われるが、一方で、その分解はLIC根絶とマウスAPLの長期寛解を誘導する。治療によるがんタンパク質の分解は、がん幹細胞を根絶するための一般的な方法となる可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る