本論文では、慢性感染が薬物によって治癒した後に、安定で抗原非依存的なCD8+T細胞記憶が成立することを示す。我々は、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)慢性感染症に対する薬物治療系を確立することにより、感染症の薬物治療後の寄生虫完全除去をはじめて詳しく立証した。治癒により、セントラル記憶細胞の特徴をもつ、安定で寄生虫特異的なCD8+T細胞集団が出現したことが、CD62L、CCR7、CD127、CD122、Bcl-2の発現とin vivo CTL機能の急速な低下にもとづいて明らかになった。治療により感染症が治癒したマウスのCD8+T細胞は寄生虫投与後に、慢性感染症マウス由来のCD8+T細胞よりも速く増殖し、より高い防御能を示した。これらの結果は、この慢性感染症では、T細胞は抗原に長期間暴露されて疲弊していると考えられるにもかかわらず、病原の完全除去により、安定かつ抗原非依存的で、防御能をもつT細胞記憶が生じることを示している。