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心不全:βアドレナリン作動性受容体のシグナル伝達を阻害するGRK5多型は、心不全に対する保護作用をもつ

Nature Medicine 14, 5 doi: 10.1038/nm1750

βアドレナリン作動性受容体(βAR)の遮断は、心不全と虚血に対する標準的な治療法である。Gタンパク質共役型受容体キナーゼ(GRK)は、βARを脱感作することから、GRKの遺伝子変異は、これらの疾患の転帰に影響を与えると考えられる。GRK2とGRK5の塩基配列再解読により、アフリカ系アメリカ人に広くみられるGRK5多型は、41位のグルタミンがロイシンに置換された非同義多型であることが明らかとなった。トランスフェクションした細胞およびトランスジェニックマウスでは、GRK5-Leu41はイソプロテレノール刺激による応答をGRK5-Gln41よりも効果的に脱共役させ、カテコールアミンによって誘発される実験的心筋症に対しても、薬剤によるβARの遮断と同様の保護作用を示した。ヒトの関連解析では、GRK5-Leu41とβブロッカー治療の間の薬理ゲノミクス的相互作用が明らかになり、GRK5-Leu41多型の存在はアフリカ系アメリカ人で心不全または心虚血による死亡率が低いことと関連していた。アフリカ系アメリカ人の心不全患者375例を対象とした前向き研究では、GRK5-Leu41は死亡または心臓移植に対して保護的に作用した。過剰なカテコールアミンシグナル伝達のβARによる脱感作がGRK5-Leu41によって増強される結果、アフリカ系アメリカ人心不全患者の生存率を向上させる「遺伝的β遮断」作用がもたらされる。これは、当該集団を対象としたβブロッカー臨床試験の結果が矛盾することの理由と考えられる。

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