Article アレルギー:樹状細胞でのc-Kit活性化によるヘルパーT細胞分化とアレルギー性喘息の制御 2008年5月1日 Nature Medicine 14, 5 doi: 10.1038/nm1766 樹状細胞(DC)は、ヘルパーT細胞が1型ヘルパーT(TH1)細胞、TH2細胞、TH17細胞というサブセットへ分化するのに不可欠である。インターロイキン6(IL-6)は、TH1応答を制限し、TH2とTH17の応答を促進することにより、これら3種類の免疫応答の調節に重要な役割を果たす。我々はDCでIL-6産生を促進する経路について調べた。アレルゲンのヒョウダニ(HDM)や粘膜アジュバントであるコレラ毒素は、樹状細胞でc-KitとそのリガンドであるSCF(stem cell factor)の細胞表面での発現を促進する。このc-KitとSCFの両方の発現上昇により、c-Kit下流のシグナル伝達が持続し、IL-6の分泌が促進される。c-Kit変異マウスの鼻腔内抗原投与や免疫化野生型マウスの肺領域リンパ節から樹立した培養中のIL-6の中和は、TH2およびTH17応答を低下させた。機能をもつc-Kitを欠くDCや細胞膜結合型SCFを発現できないDCでは、HDMやコレラ毒素に応答したIL-6の放出量が減少した。機能をもたないc-Kitを発現するDCは、強力なTH2あるいはTH17応答を誘発できず、マウスに養子移入した際のアレルギー性気道炎症は弱いものだった。c-Kit変異マウスのDCでは、TH2の分化に関連することが知られているノッチリガンドJagged-2の発現が減少していた。c-Kitの発現上昇はTH2およびTH17に偏った刺激により特異的に誘導され、TH1誘導性アジュバントであるCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、c-KitとJagged-2のいずれの発現も促進しなかった。ホスファチジルイノシトール-3(PI3)キナーゼのp110δサブユニットの触媒機能不活性型(p110D910A)を発現するマウスから得られたDCでは、コレラ毒素刺激によるIL-6の分泌量が低下した。まとめると以上の結果は、T細胞応答の制御にDCのc-Kit-PI3キナーゼ-IL-6シグナル伝達軸が重要であることを強調するものである。 Full text PDF 目次へ戻る