Article 骨粗鬆症:ミトコンドリア生合成と破骨細胞活性化におけるPGC-1βと鉄取り込みの協調作用 2009年3月1日 Nature Medicine 15, 3 doi: 10.1038/nm.1910 破骨細胞は酸を分泌する多核細胞であり、エネルギー要求性が高くミトコンドリアが豊富である。しかし、ミトコンドリアの生合成がどのように破骨細胞の分化プログラムに組み込まれているのか、そのメカニズムは不明であった。我々は、ぺルオキシソーム増殖剤活性化受容体γコアクチベーター1β (PGC-1β)をコードするPpargc1bの転写が、破骨細胞分化の過程で、活性酸素種(ROS)を介してサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)によって誘導されることを見いだした。in vitroでのPpargc1bのノックダウンは破骨細胞の分化とミトコンドリアの生合成を抑制し、Ppargc1b遺伝子を欠失したマウスは、破骨細胞機能の障害により高骨量を示した。加えてPGC-1β欠損骨芽細胞の異常も観察された。また、破骨細胞分化の過程で鉄要求性が高まるため、トランスフェリン受容体1(TfR1)の発現が、鉄調節タンパク質2を介する転写後調節によって誘導された。TfR1による鉄の取り込みにより、破骨細胞の分化と骨吸収活性が促進され、これとともにミトコンドリアでの呼吸、活性酸素種の産生およびPpargc1b転写の亢進が誘導された。鉄をキレートすると、卵巣摘出後のエストロゲン欠乏による過剰な骨吸収が抑制され、骨量減少が予防された。以上の結果より、PGC-1βにより制御されるミトコンドリアの生合成は、TfR1による鉄の取り込みおよびミトコンドリアの呼吸鎖タンパク質への鉄の供給と共役して、破骨細胞の活性化と骨代謝を制御する根本的な経路といえる。 Full text PDF 目次へ戻る