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造血:インターフェロン制御因子2は休止期の造血幹細胞をI型インターフェロン依存的な細胞数減少から防御する

Nature Medicine 15, 6 doi: 10.1038/nm.1973

サイトカインファミリーの1つであるI型インターフェロン(IFN)は、多様な生物学的あるいは細胞的過程を調整している。I型IFNが宿主の抗ウイルス状態を確立するのに不可欠であることはよく知られているが、造血系の恒常性との関係については明らかではない。本論文では、I型IFNが造血幹細胞(HSC)の細胞周期回転および細胞数減少を誘導すること、またI型IFNシグナル伝達の転写抑制因子であるインターフェロン制御因子2(IRF2)がHSCの自己複製能や多分化能の維持にかかわることを示す。Irf2-/-マウスでは、骨髄中のHSC数がIrf2+/-マウスに比べて相当度減少していた。また、Irf2-/- HSCでは、細胞周期回転が亢進しており、競合的骨髄再構築アッセイでは造血細胞を産生しないことが示された。さらに、Irf2-/- HSCの骨髄再構築能は、これらの細胞のI型IFNシグナル伝達の阻害により回復した。I型IFNシグナル伝達を誘導するpoly(I:C)、あるいはIFN-αの野生型マウスへの一過性の投与はHSCの細胞周期回転を亢進させ、慢性的なI型IFNシグナル伝達の誘導は、さらに休止期HSC数の減少をもたらした。野生型マウスへのpoly(I:C)と5-フルオロウラシル(5-FU)の併用投与で、移植したHSCの生着と造血系の再構築が可能になったことは注目すべきである。我々の知見は、HSCの休止状態の維持にかかわる分子基盤を理解する手がかりとなり、また、骨髄移植やI型IFNを用いたウイルス感染やがんに対する治療法の改良につながるかもしれない。

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