Article ウイルス:バイオフィルム様細胞外ウイルス集合体はウイルスシナプスでのHTLV-1の細胞間伝達を仲介する 2010年1月1日 Nature Medicine 16, 1 doi: 10.1038/nm.2065 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はリンパ球向性レトロウイルスで、その細胞間伝播には細胞接触が必要である。HTLV-1が感染したTリンパ球は「ウイルスシナプス」を形成するが、HTLV-1の伝達機構は十分に解明されていない。今回我々は、HTLV-1感染Tリンパ球がウイルス粒子を、糖質を豊富に含む細胞外集合体として一時的に蓄えることを示す。この集合体は、コラーゲンやアグリン、またテセリン、ガレクチン3などの細胞リンカータンパク質を含むウイルス誘導性細胞外マトリックス成分によってまとめ合わされ、細胞表面に接着している。細胞外ウイルス集合体は、他の細胞に接触すると迅速にそれへ接着し、ウイルスの蔓延と標的細胞への感染が可能になる。この集合体を除去すると、HTLV-1産生細胞の標的細胞に対する感染能が著しく低下する。以上の結果は、構造、組成と機能が細菌のバイオフィルムに類似した細胞外ウイルス粒子集合体の産生を基盤とした新たなウイルス伝播機構を明らかにしている。HTLV-1のバイオフィルム様構造は、細胞から細胞へのウイルス伝播の主要経路を表している。 Full text PDF 目次へ戻る