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腫瘍:腫瘍を介した肝臓X受容体αの活性化は樹状細胞のCCケモカイン受容体7の発現を阻害し抗腫瘍応答を弱める

Nature Medicine 16, 1 doi: 10.1038/nm.2074

ステロール代謝は、肝臓X受容体(LXR)シグナル伝達を介して自然および適応免疫応答と関連することが最近明らかになっている。ステロール代謝産物が、抗腫瘍応答を阻害するかどうかは、今のところわかっていない。樹状細胞(DC)が開始させる免疫応答には、樹状細胞のCCケモカイン受容体7(CCR7)に依存したリンパ組織への遊走後の抗腫瘍活性が含まれる。今回我々は、ヒトとマウスの腫瘍がLXRリガンドを産生しており、これが成熟段階にあるDCのCCR7発現を阻害して、それによりリンパ組織へのDC遊走が抑制されることを報告する。ヒトの腫瘍内にCD83+CCR7 DCが検出されたことは、この知見と一致する。LXRリガンドを不活化する酵素であるスルホトランスフェラーゼ2B1b(SULT2B1b)を発現する腫瘍を注入したマウスは、腫瘍流入リンパ節へのDCの遊走の回復と腫瘍内での明らかな炎症によって腫瘍増殖が抑えられた。腫瘍増殖の抑制は、LXR-αをコードする遺伝子を欠損するマウス(Nr1h3−/−マウス)の骨髄を移植されたキメラマウスでも観察された。したがってこの結果は、コレステロール代謝が関与する、腫瘍の新たな免疫回避機構を明らかにしている。この経路の操作によって、がん患者の抗腫瘍免疫を回復させることができるかもしれない。

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