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肺疾患:脂質ポンプAtp8b1によるカルジオリピンの動的調節は実験的肺炎で肺傷害の重症度を決定する

Nature Medicine 16, 10 doi: 10.1038/nm.2213

肺炎はいまだに、米国における感染症による死亡の主要原因だが、発生病理の基礎となる根本的に新しい概念モデルはあらわれていない。我々は、細菌性肺炎を発症しているヒトとマウスでは、まれなミトコンドリア特異的リン脂質であるカルジオリピンの肺胞洗浄液中の量が著しく増加していることを明らかにし、カルジオリピンがサーファクタント機能を強力に障害することを見いだした。マウスにカルジオリピンを気管内投与すると、肺の換気力学特性の障害、細胞生存とサイトカインネットワークの変化や肺硬化などの肺炎の臨床表現型が再現される。さらに、P型ATPアーゼ膜貫通型脂質ポンプAtp8b1がまれなカルジオリピン輸送体であることを同定し、その特性を明らかにした。Atp8b1変異体は、ヒトとマウスの重症肺炎と関連している。Atp8b1は塩基性残基が豊富なモチーフを介して細胞外液中のカルジオリピンを結合し、これを取り込む。マウスで、カルジオリピン結合モチーフを含むペプチドの投与あるいはAtp8b1遺伝子の導入は、細菌性肺傷害を軽減し、生存率を改善した。以上の結果は、Atp8b1がカルジオリピン取り込み輸送体であり、炎症が起きていたりAtp8b1に欠陥があると、肺胞液からカルジオリピンを除去するAtp8b1の能力を超える事態になるという新たな考え方を明らかにしている。この発見は、カルジオリピン量あるいはその分子相互作用の調節を目的とする新しい肺炎治療戦略への道を開くものだ。

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