Technical Report

幹細胞:プレイオトロフィンは造血幹細胞の増幅や再生を調節する

Nature Medicine 16, 4 doi: 10.1038/nm.2119

造血幹細胞(HSC)の自己複製は、内在性および外来性のシグナルの両方によって調節されている。HSCの自己複製を調節する複数の経路の一部は解明されているが、これらの経路を送達可能な増殖因子によって刺激してHSCの増殖や再生を引き起こせるかどうかは、まだほとんどわかっていない。本論文では、造血における機能が知られていない神経突起伸展因子のプレイオトロフィンが、in vitroでのHSC増幅およびin vivoでのHSC再生を効率よく引き起こすことを示す。マウス骨髄HSCをプレイオトロフィン処理すると、競合的骨髄再建法による測定で、長期再構築能をもつHSCの数が培養中で著しく増加した。ヒト臍帯血CD34+ CDCD38_ Lin_をプレイオトロフィン処理した場合にも、培養での長期再構築能をもつ重症複合型免疫不全(SCID)細胞数が、インプット細胞やサイトカイン処理培養と比べて大幅に増加した。放射線照射マウスにプレイオトロフィンを全身投与すると、in vivoで骨髄幹細胞および骨髄前駆細胞が顕著に増幅されたことは、プレイオトロフィンがHSCの再生を促す増殖因子であることを示唆している。機構的には、プレイオトロフィンはHSCでホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達を活性化した。PI3KもしくはNotchシグナル伝達の拮抗作用は、プレイオトロフィンの介在する培養HSC増幅を阻害した。したがって、分泌型増殖因子であるプレイオトロフィンが、HSCの増幅と再生の両方を調節する新規因子であることが突き止められた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度