Letter がん:乳がんに対する予防的ワクチン接種のための自己免疫的戦略の一例 2010年7月1日 Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2161 ワクチン接種は、病気の予防に使われた場合に最も効果を発揮するが、がんワクチン開発は主に、定着して増殖中の腫瘍に対する治療を目的とするものに集中している。がんを予防するワクチンの開発が困難なのは、腫瘍抗原が変化した自己タンパク質であり、ワクチンを予防に用いた場合にはおそらく深刻な自己免疫性の合併症が引き起こされると考えられるからである。本論文では、複数のマウスの乳がんモデルを用いて、予防的ながんワクチン接種の戦略候補の1つを明らかにする。我々は、α-ラクトアルブミンをワクチンの標的自己抗原として選んだ。それは、α-ラクトアルブミンが乳房特異的分化タンパク質であり、ヒトの乳がんの大部分で、また乳腺上皮細胞では泌乳期間にのみ多量に発現しているからである。α-ラクトアルブミンに対する免疫応答性が、乳がんの遺伝子改変マウスモデルでの自発性腫瘍の増殖、およびBALB/cマウスでの可移植性4T1乳がんに対して、かなりの防御と治療効果を示すことがわかった。α-ラクトアルブミンは泌乳期間という条件下においてのみ発現するので、ワクチンによる予防が誘導されても、泌乳期間にあたらない正常な乳房組織では検出されるような炎症は起こらない。したがって、α-ラクトアルブミンに対するワクチンの接種は、乳汁分泌を容易に回避でき、かつ乳がん発症のリスクが高い、出産後で閉経前の時期の女性を乳がんの発症から守るための安全かつ効果的な方法だと考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る