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糖代謝:セロトニンは妊娠中の膵ベータ細胞量を調節する

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2173

妊娠中は、胎児のエネルギー必要量によって母体の代謝が変化する。母体のインスリン抵抗性の増加によって、成長中の胎児への栄養の流れが維持されるが、その一方で、プロラクチンや胎盤性ラクトゲンはこの抵抗性と均衡をとり、母体のインスリン産生細胞であるベータ細胞の増殖を引き起して母体の高血糖を防止する。しかし、これらの乳腺刺激ホルモンがベータ細胞を増殖させる詳しい機構は解明されていない。本論文では、ラクトゲンシグナル伝達下流でのセロトニンの作用により、膵ベータ細胞の増殖が刺激されることを示す。セロトニン合成酵素であるトリプトファン水酸化酵素1(Tph1)の発現やセロトニン産生は、妊娠中、あるいはin vitroでのラクトゲン処理後に、ベータ細胞で急激に上昇した。妊娠マウスでは、食餌中のトリプトファン制限、あるいはTph阻害剤によりセロトニン合成を抑制するとベータ細胞の増殖が妨げられ、インスリン感受性に影響を与えずに耐糖能異常が引き起こされた。Gαq共役セロトニン受容体である5-ヒドロキシトリプタミン受容体2b(Htr2b)の母体膵島での発現は妊娠中に増加し、出産直前に正常化したが、Gαi共役受容体であるHtr1dの発現は、妊娠末期および出産後に増加した。妊娠マウスでのHtr2bシグナル伝達の遮断によっても、ベータ細胞の増殖が妨げられ、耐糖能異常が引き起こされた。これらの研究から、妊娠中に予想されるインスリン必要量に応じてベータ細胞量を調節するためのシグナル伝達経路が明らかにされた。薬物や食餌などのこの経路の調節因子は妊娠糖尿病のリスクに影響を与えるかもしれない。

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