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がん:肉腫および複数種のがんの、ゲノム複雑度に関連する遺伝子発現シグネチャーに基づく確実な予後予測

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2174

肉腫は不均質で悪性の間葉系腫瘍である。これまでは、組織学的な悪性度分類が転移なし生存の最も信頼できる予測指標であったが、一部の組織型の腫瘍については再現性が中程度であるとか予後規定因子として有効でないなどの制約があった。患者の病期分類を改善するために、183例の肉腫症例からなる訓練群についてゲノムと遺伝子発現のプロファイリングを行い、有糸分裂や染色体制御にかかわる67個の遺伝子からなる予後予測用の遺伝子発現シグネチャー、つまり肉腫複雑度指数(complexity index in sarcomas:CINSARC)を設定した。多変量解析で、CINSARCは訓練群、並びに127例の肉腫からなるこれとは独立の確認群で転移の発生を予測できた。これは肉腫患者での転移発生の予測について、フランス対がんセンター連合の病期分類システムより優れている。さらにCINSARCは胃腸間質腫瘍、乳がんおよびリンパ腫についても予後予側ができる。この遺伝子発現シグネチャーを応用すれば、肉腫患者に対するアジュバント療法をより選択的に使用でき、これはこうした患者での医原性の罹患率低下と予後の改善につながるだろう。

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