Letter 自己免疫疾患:実験的自己免疫性脳脊髄炎と多発性硬化症で見られる可逆的な形の軸索損傷 2011年4月1日 Nature Medicine 17, 4 doi: 10.1038/nm.2324 広く見られる中枢神経系炎症疾患である多発性硬化症では、免疫を介した軸索損傷が、一生の間続く神経学的欠損の原因となる。どのように軸索損傷が始まるのかは知られていない。今回我々は、in vivo画像化法を用い、多発性硬化症のマウスモデルで以前には報告されていなかった形の軸索損傷を確認した。FAD(focal axonal degeneration)と名付けたこの過程は、軸索の局所的な腫大に始まり、断片化へと連続的に進行する一連の段階を特徴とする。腫大した軸索のほとんどは数日間変化しないままで、その一部は自然に回復する。FADの初期段階は、無傷の髄鞘を持つ軸索で観察できる。したがって古典的な見解とは対照的に、多発性硬化症の顕著な特徴である脱髄は、軸索損傷にとっての前提条件ではない。軸索内ミトコンドリアの限局的な病変が、損傷の最も早く現れる超微細構造的徴候であり、これは軸索の形態変化に先だって起こる。分子イメージングおよび薬理学的実験により、マクロファージに由来する活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)がミトコンドリアの病変を引き起こし、FADを開始させることが明らかになった。実際に、ROSおよびRNSの中和によって、すでに変性過程に入った軸索が回復する。また、FADに該当する軸索変化は、ヒトの急性多発性硬化症の病変部で検出される。まとめると我々のデータは、炎症性軸索損傷は自然に回復する可能性があり、したがって治療の有望な標的であることを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る