Letter 肥満:視床下部IKK-βとNF-κBを標的にして高血圧と肥満の機構を分離する 2011年7月1日 Nature Medicine 17, 7 doi: 10.1038/nm.2372 肥満に関連する高血圧は、現在広く見られる健康問題となっており、心血管疾患(CVD)発生の主要リスク因子である。肥満の病態生理に関する最近の研究では、肥満の病因に視床下部がかかわっていることが示されている。しかし、高血圧と肥満とのよく見られる結びつきも視床下部の機能不全によって説明できるのかどうかは、多くの型の高血圧が神経因性であることが認められつつあるにもかかわらず、明らかになっていない。本論文では、炎症促進性タンパク質であるNF-κB(nuclear factor-κB)とその上流の活性化因子IKK-β(IκB kinase-β、Ikbkbにコードされる)の内側基底視床下部における急激な活性化が、マウスで肥満とは無関係に血圧を急速に上昇させることを示す。視床下部の炎症によって誘発されるこの型の高血圧は、交感神経による血行動態の上方制御が関わっており、交感神経の抑制によって回復する。機能喪失実験では、内側基底視床下部でのNF-κBの阻害が、肥満に関連する高血圧を、体重変化には関係なく改善することが示された。さらに、視床下部IKK-βおよびNF-κBの活性化による血圧上昇作用には、プロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンが極めて重要であり、これが肥満に関連する高血圧の基盤となっていることがわかった。以上より、内側基底視床下部、特に視床下部POMCニューロンでの、肥満に関連したIKK-βおよびNF-κB活性化は、肥満と高血圧発症との間の直接的な結びつきといえる。病因となるこの結びつきを断つことは、肥満管理を必要とせずに、肥満に関連する高血圧およびCVDを制御する方法につながるかもしれない。 Full text PDF 目次へ戻る