Letter

ウイルス:ヌクレオリンはヒト呼吸器合胞体ウイルスの細胞受容体である

Nature Medicine 17, 9 doi: 10.1038/nm.2444

ヒトの呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による疾患は、世界中で大きな疾病負荷を引き起こしている。有効なワクチンや治療法はなく、RSVに特異的な抗体を用いる受動免疫防御の使用はリスクの高い患者に限定されている。ウイルスの侵入や複製に必要な細胞受容体は、いまだに明らかにされていないが、これが特定されれば、感染発生機序の解明が進むとともに、新規抗ウイルス療法開発の標的が得られるだろう。今回我々は、in vitroでRSVがウイルスの融合エンベロープ糖タンパク質を介して宿主細胞のヌクレオリンと相互作用し、頂端細胞表面ではヌクレオリンと特異的に結合することを示す。さらに、in vitroでウイルス播種前にヌクレオリンに特異的な抗体を用いた中和実験、細胞への播種前にウイルスを可溶性ヌクレオリンと共に培養した競合実験、細胞でのヌクレオリン発現をサイレンシングするRNA干渉(RNAi)実験で、RSVの感染が減少することが認められた。非許容細胞であるヨトウガ(Spodoptera frugiperda)Sf9細胞にヒト・ヌクレオリンを導入すると、RSV感染に対する感受性が賦与された。マウス肺でRNAiを用いてin vivoでヌクレオリンをノックダウンすると、RSV感染の有意な低下(P=0.0004)が起こったことは、ヌクレオリンがin vivoでRSV受容体として機能していることを確証している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度