Article

がん:黒色腫では発がん性NRASシグナル伝達が腫瘍細胞の生存と増殖を別々に調節している

Nature Medicine 18, 10 doi: 10.1038/nm.2941

BRAFがん原遺伝子に対する強力な阻害因子の発見はBRAFに変異を持つ黒色腫の治療に大変革をもたらしたが、NRASに変異がある黒色腫にはいまだ有効な治療法がない。RASがん原遺伝子に対する直接的な薬理学的抑制はこれまでのところ成功していないため、我々はシステム生物学的手法を用いてRAS抑制効果を模倣でき、協働的に働く薬剤の組み合わせの探索を行った。本論文では、NRAS変異を持つ黒色腫を誘導可能なマウスモデルを使い、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)の薬理学的阻害によってアポトーシスは活性化するが、細胞周期停止は引き起こされないことを明らかにする。これは、アポトーシス活性化と細胞周期停止の両方を引き起こす遺伝的なNRAS(neuroblastoma RAS homolog)削除とは対照的である。ネットワークモデル化によって、こうした表現型のちがいはサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)によって生じることが突き止められた。それゆえ、in vivoでのMEKとCDK4の両方の薬理学的な抑制は、治療上かなりの相乗効果をもたらす。我々は発がん性のNRASシグナル伝達について、出力がゲートコントロールされていて、不完全な抑制の結果として下流の異なる生物学的表現型が切り離されるという勾配モデルを考えている。このようなゲートコントロールされるシグナル伝達モデルは、NRAS変異を持つ黒色腫において薬剤併用によって同時に阻害される未知の標的を見つける際の新たな枠組みを提供する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度