白血病:NOTCH1はPKC-θおよび活性酸素種のRUNXを介する調節によってT細胞白血病発症活性を増進する
Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2960
細胞代謝の副産物である活性酸素種(ROS)は細胞内巨大分子を損傷し、また過剰に存在する場合には、造血幹細胞の正常な分化と枯渇を促進することがある。しかし、白血病を引き起こす細胞(leukemia-initiating cell:LIC)でROSの量を調節する機構やこのような細胞でのROSの生物学的役割はほとんどわかっていない。今回我々は、未成熟T前駆細胞の悪性腫瘍であるT細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)では、CD44+細胞のROSlowサブセットが、最も侵襲性の高いLICに非常に多く、ROSの蓄積がプロテインキナーゼCθ(PKC-θ)の発現低下によって抑制されていることを示す。PKC-θを欠損した初代マウスT-ALLではLIC活性が高まっているが、マウスおよびヒトの初代T-ALL ではともに、PKC-θの強制発現によってLIC活性が障害されたことは注目すべきである。また、PKC-θは新規経路によって調節されており、この経路ではNOTCH1がRUNX3(runt-related transcription factor 3)を誘導し、RUNX3はRUNX1を抑制し、RUNX1はPKC-θを誘導していることがわかった。NOTCH1は、T-ALLで起こる変異によって活性化されることが多く、マウスとヒトのモデルでのLIC活性に必要であり、したがってPKC-θを抑制するように働いている。これらの結果は、T-ALLにPKC-θとROSが重要な機能的役割を果たしていることを明らかにし、またin vivoでの侵襲性の生物学的挙動が、PKC-θの発現もしくはその活性の促進、あるいはROS蓄積を促す治療戦略によって制限される可能性を示唆している。