Perspective
染色体修復・再生(Chromoanagenesis)とがん:局所的で複雑な染色体再編成の機構とその帰結
Nature Medicine 18, 11 doi: 10.1038/nm.2988
ヒト腫瘍、あるいは発生異常のみられる個体に由来するDNAの次世代シーケンサーによる塩基配列解読が、我々がchromoanagenesis(染色体修復・再生)と名付けた過程の発見につながった。この過程では、単回の破壊事象により、染色体の1つもしくは少数の座位で、多数の複雑な再編成が起こる。このような再編成は2つの機構によって引き起こされるが、これらの機構は共に、有糸分裂時の染色体分離の過誤によって起こりやすくなり、再編成を受ける染色体を含む小核がまず形成される。第1番目の機構では、その小核内でDNA複製完了前に有糸分裂が始まることにより、染色体の粉砕(chromothripsis)が起こるが、染色体断片を納めた小核膜は崩壊しないために次の間期に小核内でランダムな染色体再構成が起こる。第2番目の機構では、小核内でのDNAの複製に局所的な異常があるために、マイクロホモロジーが仲介する鋳型の連続的な切り換え(chromoanasynthesis)が開始され、遺伝子コピー数が変化した局所的な再編成が起こる。多様な腫瘍、また先天性異常や発生異常のみられる個体に複雑な再編成が存在することは、chromoanagenesisがヒト疾患に与える影響をはっきり示している。