Letter エイズ:HIV-1感染に対する抗レトロウイルス療法の定量的基盤 2012年3月1日 Nature Medicine 18, 3 doi: 10.1038/nm.2649 HIV-1感染の死亡率を急激に低下させた高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、現代医学の主要な成果といえる。しかしながらHAARTについては、基礎となる理論が存在していない。ウイルス複製の動態を記述する明快なモデルはあるが、複製の制御に必要とされる目標値に関して、薬剤の組み合わせが示す抗ウイルス活性に対する測定基準は存在しない。治療指針は、臨床試験の経験的結果に基づくものであり、こうした試験では投与計画の忍容性などの他の因子も結果に影響している。薬剤の特定の組み合わせだけがウイルス複製を抑制する理由は明らかになっていない。今回我々は、抗レトロウイルス薬の組み合わせに本来備わっている抗ウイルス活性の定量を行った。ほとんどの抗レトロウイルス薬が単独で、今まで知られていなかった複雑で非線形的な薬物動態を示し、これが臨床で使用される濃度での阻害活性を決定していることがわかった。また、薬剤の組み合わせに対する主要な理論のうちに、複数の抗レトロウイルス薬の複合効果を正確に予測できるものがないことも実証された。しかし、薬剤併用の効果は、薬剤の効果の独立度を考慮する新規な方法を使って理解可能である。この解析法を使えば、薬剤の多様な組み合わせそれぞれが持つ阻害活性を、臨床で使用される濃度で直接比較でき、臨床試験の結果を照合して、治療の成功につながるだけの阻害が得られる目標レベルが決定でき、治療の簡素化と最適化のための合理的な根拠が得られる。 Full text PDF 目次へ戻る