Article 神経変性疾患:ATM欠損の際に起こるHDAC4の核内蓄積は血管拡張性失調症での神経変性を促進する 2012年5月1日 Nature Medicine 18, 5 doi: 10.1038/nm.2709 血管拡張性失調症は、Atm遺伝子の変異が原因の神経変性疾患である。今回我々は、ATM(ataxia telangiectasia mutated)の欠損はニューロンでヒストンデアセチラーゼ4(HDAC4)の核内蓄積を引き起こし、神経変性を促進することを報告する。核内HDAC4は、クロマチンに加えて、MEF2A(myocyte enhancer factor 2A)やサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)に結合し、ヒストンの脱アセチル化とニューロンでの遺伝子発現変化を引き起こす。HDAC4活性、あるいはその核内蓄積を阻害すると、このような神経変性変化が減弱し、ATM欠損マウスの行動異常のいくつかが改善される。しかし、神経変性の完全な回復にはHDAC4が細胞質に存在することが必要であり、血管拡張性失調症の表現型は細胞質からのHDAC4消失とその核内蓄積の両方が原因で生じると考えられる。HDAC4が細胞質にとどまるためには、リン酸化される必要がある。HDAC4ホスファターゼであるプロテインホスファターゼ2A(PP2A)は、ATMが介在するリン酸化によって発現が低下する。ATM欠損では、PP2A活性が増強され、これがHDAC4の脱リン酸化とHDAC4の核内蓄積につながる。我々の結果は、血管拡張性失調症の神経変性を引き起こす事象にHDAC4の細胞内局在がきわめて重要な役割を持つことを明確に示している。 Full text PDF 目次へ戻る