ネオアジュバント化学療法(NAC)は、乳がん患者のほぼ30%で病理学的完全奏功(pCR)をもたらすが、多くの患者では化学療法後にもがんが残存する。残存乳がんは、pCRが達成された患者に比べてより高い転移性再発リスクと、より悪い予後と相関する。我々は、NAC後の腫瘍の分子プロファイリングによって薬剤抵抗性に関連する遺伝子が同定されるだろうと考えた。NAC後に外科的切除された乳がんのプロファイリングは、転写産物のデジタル測定により行った。ERKホスファターゼの1つであるDUSP4(dual specificity protein phosphatase 4)の濃度低下は、NAC後の腫瘍細胞の高い増殖性および基底細胞様乳がん(BLBC)状態と相関していた。BLBCでは、他の乳がんサブタイプに比べて、DUSP4プロモーターのメチル化度が高く、Ras-ERK経路活性化の遺伝子発現パターンが見られた。DUSP4の過剰発現は、化学療法によって誘発されるアポトーシスを増やすが、DUSP4の大幅な減少は化学療法に対する応答を減弱した。NAC後の原発腫瘍でのDUSP4発現低下は、治療抵抗性の高Ki-67スコアおよびより短い無再発生存期間と相関していた。また、異種移植BLBCでは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害は、ドセタキセル投与と相乗作用を示した。したがって、DUSP4の発現低下はBLBCでRas-ERK経路を活性化し、その結果として抗がん剤化学療法に対する反応性が低下する。