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肺傷害:肺内皮糖衣は実験的敗血症での好中球接着と肺傷害を調節する
Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2843
敗血症は感染に対して生じる全身性の炎症反応であり、炎症性の肺疾患である急性肺傷害(ALI)へと高率で進行することが一般的である。敗血症に伴うALIは、肺内皮の糖衣の分解によって始まり、好中球の接着と炎症を引き起こすと我々は考えた。生体顕微鏡観察により、マウスでは内毒素血症により、腫瘍壊死因子α(TNF-α)に依存する機序を介して肺微小血管糖衣の分解が誘発されることがわかった。糖衣の分解では、ヘパラン硫酸の特異的消失がみられ、これはTNF-α応答性でヘパラン硫酸特異的なグルクロニダーゼである内皮ヘパラナーゼの活性化と同時に起こることが見いだされた。糖衣の分解は、循環血中の微粒子に接着する内皮表面接着分子を増加させ、好中球接着を助長した。マウスでヘパラナーゼを阻害すると、内毒素血症に伴う糖衣消失と好中球の接着が防止され、その結果として敗血症に誘発されるALIの症状が軽減し、死亡率が低下した。今回の知見は、ヒトの疾患にも関係していると考えられる。それはヒトの敗血症に伴って生じる呼吸不全は、血漿中のヘパラン硫酸分解活性の上昇と関連しており、また、びまん性肺胞傷害のみられる患者の肺生検では正常なヒト肺組織よりもヘパラナーゼ含量がより高いことが示されたからである。